
工場監査とは?海外工場と取引を始める前に確認する項目と進め方
工場監査とは、新しい海外工場と取引を始める前などに、その工場が実際に稼働し、求める製品を求める品質・数量・時期でつくり続けられる体制を持っているかを、現地で確かめることです。見積りやサンプルだけでは分からない「その工場のふだんのつくり方」を見るのが目的で、主に、工場の実在、生産能力と設備、工程と外注、品質の管理体制、これまでの製品、労働環境と安全、図面などの情報の扱いを確認します。
工場監査は「その工場と取引してよいか、継続して生産を任せられる体制があるか」を確認するものです。一方、出荷前検品は「実際に生産された製品が、決めた仕様・品質基準を満たしているか」を確認するものです。出荷前検品については、コラム「出荷前検品とは?海外工場の量産品で何を・どこまで確認するのかを解説」で整理しています。
工場監査は、合格・不合格を付けるためだけのものではありません。取引を始めるか、条件付きで進めるか、見送るかを判断し、取引を始めたあとに何を重点的に確認するかを決める材料になります。このコラムでは、海外工場へのOEM・製造委託を検討している担当者の方に向けて、工場監査で何を確認し、どう準備し、結果をどう使うかを、日本側の窓口として工場と日本の間に立つ立場から整理します。
工場監査はなぜ必要なのか
工場監査が必要なのは、書類・見積り・サンプルからは、量産のときの実際のつくり方が見えにくいためです。
たとえば、サンプルは量産とは別の担当者や設備で、時間をかけてつくられることがあります。会社案内に載っている設備が、実際には別の工場や外注先のものであることもあります。見積りの単価が低い理由が、検査の工程を省いていることにある場合もあります。こうした点は、現場で工程と記録を見て、担当者に話を聞いてはじめて分かることが少なくありません。
また、取引を始めたあとに問題が見つかると、型代やサンプルの費用、発売の予定などがすでに動いているため、工場を変える判断がしにくくなります。取引を始める前に確かめておくことは、あとで引き返すときの負担を小さくすることにもつながります。
工場監査では何を確認するのか
工場監査で確認する主な項目は、次のとおりです。製品や取引の規模によって重点は変わりますが、新しい工場と取引を始める前には、ひととおり確かめておきたい項目です。
| 確認する項目 | 主な中身 | 見るときのポイント |
|---|---|---|
| 工場の実在 | 会社の登記、所在地、稼働の状況 | 案内された場所で実際に操業しているか。契約の相手と、実際につくる工場が同じか |
| 生産能力・設備 | 設備の種類と台数、人員、稼働の状況 | 必要な数量を、必要な時期につくれるか。繁忙期にどう受けるか |
| 工程と外注 | 自社で行う工程、外に出している工程 | 表面処理や部品の加工などを外注していないか。外注している場合、その先をだれが管理しているか |
| 品質の管理体制 | 材料の受け入れ時の検査、工程内の検査、出荷前の検査、記録 | 検査の基準が書面になっているか。記録が残っているか。不良が出たときの処理の手順があるか |
| これまでの製品 | つくってきた製品、取引先が求めてきた水準 | 似た製品・似た素材の経験があるか。日本向けの表示や梱包の経験があるか |
| 労働環境・安全 | 作業の安全、労働時間、職場の環境 | 安全に配慮して作業できる環境か。安全衛生、労働時間、年齢確認や採用管理等の仕組み・記録を確認し、児童労働・強制労働等の人権リスクにつながる兆候がないか |
| 情報の扱い | 図面・仕様書・型の管理 | 預けた図面や型が、ほかの目的に使われないよう管理されているか |
なかでも見落としやすいのが「工程と外注」です。訪問した工場では組み立てだけを行い、部品の加工は別の工場で行っているということもあります。その場合、品質を左右する工程が確認の対象から外れてしまうため、主要な工程をどこで行っているかを確かめ、必要に応じて外注先も確認の対象にします。
認証の有無は、範囲と有効性まで確かめる
工場から、品質マネジメントシステムの規格であるISO 9001などの認証を取得していると説明されることがあります。ISO 9001などのマネジメントシステム認証については、証明書の写しだけでなく、認証番号、対象拠点、認証範囲、有効期限、認証機関を確認します。訪問する工場や依頼する製品が、認証の範囲に含まれているとは限らないためです。
海外工場の場合は、IAF CertSearch等の認証情報データベースや、証明書を発行した認証機関の公式情報から確認する方法があります。JAB認定の認証については、JABの認証組織検索も利用できます。
公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)は、JABに認定された認証機関から提供された認証組織の情報を検索できるページを公開しており、組織名や登録範囲などで検索できます。掲載された詳細情報については、該当する認証機関に照会するよう案内されています。JABのよくあるご質問によると、掲載されるのは、JABが認定した認証機関から認証を取得し、かつJABのウェブサイトでの公表を希望している組織です。JAB以外の認定機関から認定を受けた認証機関で認証を取得している場合などは表示されないため、見つからないことだけで判断せず、認証書を発行した認証機関に確認します。
なお、ISO 9001は品質マネジメントシステムに関する認証であり、個々の製品の品質そのものを保証するものではありません。認証の有無だけで判断せず、その仕組みが現場で実際に動いているかを、監査で確かめることが大切です。
労働環境や人権に関わる状況も確かめておく
品質や生産能力とあわせて、働く人の安全や人権に関わる状況も、取引を始める前に確かめておきたい項目です。日本政府が2022年9月に策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(経済産業省ウェブサイト)は、法的拘束力を有するものではないとしたうえで、企業の規模、業種等にかかわらず、日本で事業活動を行う全ての企業は、国内外のサプライヤー等を含めた人権尊重の取組に最大限努めるべきであるとしています。また、人権への影響の評価は定期的に繰り返して行うべきとしたうえで、新たな取引関係に入ろうとする場合などにも影響評価を実施すべきであるとしています。同ガイドラインでは、取組の実効性を評価する方法の具体例として、サプライヤー等へのヒアリング、質問票の活用、工場等を含む現場への訪問、監査や第三者による調査等が挙げられています。
工場監査の前に何を準備しておくのか
監査の前には、自社が工場に求める条件を整理し、それに沿った確認項目の一覧を用意しておきます。条件が決まっていないまま訪問すると、工場の説明を聞くだけで終わり、ほかの工場と比べる材料が残りません。
- 求める条件を言葉にする:何を、どれくらい、いくらで、いつまでに、どの品質でつくりたいか。すべてが決まっていなくても、動かせない条件は先に決めておきます
- 確認項目の一覧をつくる:上の表をもとに製品に合わせて重点の項目を決め、複数の工場を同じ項目で比べられるようにします
- 事前に資料を依頼する:会社の登記に関する書類、設備の一覧、工程の流れ、検査の基準書や記録の例、認証書の写しなど
- 秘密保持の取り決めを先に交わす:図面や仕様書を見せて相談する前に、秘密保持の取り決めを結んでおきます
- 当日に見る工程と、話を聞く相手を決める:営業の担当者だけでなく、生産や品質の責任者から話を聞けるよう依頼しておきます
事前に受け取った資料と当日の現場が食い違っていないかを見ることも、監査で確認することのひとつです。
監査の当日は、どこを見ればよいのか
当日は、説明を聞くだけでなく、工程・記録・人を実際に見ることが大切です。
- 工程:材料の受け入れから、加工、組み立て、検査、梱包、保管までを順に見て、説明された工程と実際の工程が同じかを確かめます
- 記録:検査の記録、不良が出たときの処理の記録、設備の点検の記録が、実際に残っているかを見ます
- 人:現場の担当者が、検査の基準や不良品の扱いを把握しているかを確かめます
- 置き場と保管:良品と不良品、検査前と検査後のものが分けて置かれているか。材料や製品が汚れや湿気から守られているかを見ます
あわせて、仕様どおりのサンプルを実際につくってもらい、その出来を確かめると、説明だけでは分からない実力が見えやすくなります。
監査の結果は、どう判断に使うのか
監査の結果は、「取引を始める」「条件付きで進める」「見送る」の判断と、取引を始めたあとの管理の重点を決めるために使います。
すべての項目を十分に満たす工場ばかりではありません。気になる点があった場合は、その点が製品の品質や納期にどこまで影響するかを考え、工場に改善の計画を出してもらい、改善を確かめてから量産に進むという進め方もあります。反対に、事前の説明と現場が大きく食い違っている、記録が残っていない、質問への答えがあいまいなまま変わらない、といった場合は、見送ることも含めて検討します。
一方、工場の実在性への疑義、認証書類の虚偽、重大な安全・人権リスク、重要工程の無断外注など、取引判断に大きく影響する事項については、通常の改善項目とは分けて慎重に判断します。
また、工場監査は一度行えば終わりではありません。人や設備が入れ替わったり、外注先が変わったりすると、工場の状態も変わります。取引を始めたあとも、不良が増えたときや、製品・数量が大きく変わるときには、あらためて工場の状態を確かめます。
工場監査をすれば、量産の品質は保証されるのか
工場監査は、取引を始める前に「この工場に任せられるか」を見極めるためのもので、量産される製品一つひとつの品質を保証するものではありません。
量産の品質は、取引を始めたあとの確認と組み合わせて守ります。量産前のサンプルで合否の基準を決め、生産中の確認や出荷前の検品で、決めた基準どおりにつくられているかを確かめます。出荷前の検品で何をどこまで確認するかは、コラム「出荷前検品とは?海外工場の量産品で何を・どこまで確認するのかを解説」で整理しています。工場を選ぶときの見積りの比べ方は、コラム「海外工場の見積りの読み方|材料費・加工費・型代の内訳と比べ方」もあわせてご覧ください。
出典:経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(2022年9月)、公益財団法人日本適合性認定協会ウェブサイト「JAB認定のマネジメントシステム認証組織検索」「よくあるご質問」。本記事では、これらの内容を要約・編集して紹介しています。
プロキシー・コーに相談できること
株式会社プロキシー・コーは、日本企業の海外製造を日本側の窓口として管理する会社です。新しい工場と取引を始める前の確認(実際に稼働している工場かどうか、必要な設備と工程を自社で持っているか外注しているか、これまで作ってきた製品とその品質、仕様どおりにサンプルを作れるか など)や、いま取引のある工場の状態の確認を承ります。確認した内容は報告としてお渡しし、「問題なし」で終わらせず、気になった点はそのままお伝えします。工場を探すところからの進め方は海外工場・サプライヤー選定のページでご紹介しています。初回ヒアリング・簡易相談は無料です。具体的な工場調査、設計・開発、試作、現地対応等が必要な場合は、内容を確認のうえ事前にお見積りいたします。検討中の工場や、いまお使いの工場について気になっていることがあれば、お問い合わせからご相談ください。

